父は、静かなところへの住み替えを望んでいました。
両親が長年住んでいた家は、お店や病院、駅が近くて便利な場所にありました。でも、家の前の道路は車の通りが多く、夜中にも車の音が聞こえてきます。
その音が気になっていた父は、以前から住み替えを希望していました。資料を取り寄せたり、内見に行ったり。家を探していた期間は、約5年です。そうして見つけた中古住宅を購入し、リフォームして引っ越しました。
わたしも、自分が家を買った経験やFP3級で学んだことを生かしながら、両親の住み替えを手伝いました。その中で特にやってよかったのが、両親のお金を整理し、ライフプランを一緒に見直したことです。
親が望む家に住めるのは、うれしいこと。でも、買った後のお金は大丈夫? 応援したいけれど、手放しでは喜べない。親の住み替えで、そんなふうに迷う方もいるのではないでしょうか。わたしも気になっていたのは、購入後の暮らしでした。
そこで今回は、両親と一緒に資産や生活費を整理したこと、元の家が売れるまでのお金をどう用意したかをお話しします。
希望の家を探すうちに、当初予算を超える物件も候補に
父が住み替え先に一番求めていたのは、静かさでした。
ただ、それまでの家は生活に便利な場所にあったので、静かならどこでもいいわけではありません。スーパーや病院、ドラッグストアなどへの行きやすさも、両親にとって大切な条件でした。静かさも便利さもほしい。家探しは、なかなか「いいとこ取り」とはいきませんね。
条件と予算の両方に合う家は、なかなか見つかりませんでした。探し続けるうちに、当初の予算の約150%になる物件も父の候補に。つまり、最初に考えていた予算の1.5倍です。
中にはリフォームがあまり必要なさそうな家もあったので、物件価格だけでは比べられません。それでも、購入にお金を使った後、老後の生活費は足りるのか。そこは、やっぱり気になりました。
長く探してきた父の希望も、大事にしたい。心配しているだけでは話が進まないので、まずは両親のお金をひと通り整理することにしました。
両親の資産と1年間の生活費を整理した
最初にしたのは、両親の資産の洗い出しです。少し堅い言い方ですが、どこに、どんなお金があるのかを確認するところから始めました。
父は資産をおおむね把握していましたが、両親のお金は、いくつかの口座に分かれていました。わたしは里帰り中に資産を確認し、家計簿アプリの「Money Forward ME」でまとめて見られるようにしました。
両親は、それまで家計簿アプリを使っていませんでした。生活費は1年間の実績を見ながら、食費、水道光熱費など項目ごとに整理。普段の暮らしに、どれくらいかかっているのかを見ていきました。
収入については、定期的に届く年金のお知らせを見て確認。手元にあるお金だけでなく、これから入ってくるお金と出ていくお金を合わせて見るようにしました。
Money Forward MEで家計簿をつけ、資産もまとめて管理するようになってからは、確認がとても楽になりました。一か所で見られるだけでも、ずいぶん違います。
父が作っていたライフプラン表を一緒に見直した
実は父、以前から自分でExcelのライフプラン表を作っていました。今回はその表を使い、確認した数字を入れながら、一緒に見直していきました。
表は横に年度と両親それぞれの年齢、縦に収入や支出の項目を並べ、年ごとの収支や銀行残高が見える形でした。生活費も一つにまとめず、食費や水道光熱費、予備費など項目ごとに整理しました。
年金のお知らせや過去の支出を確認して表に反映し、住み替えた後の暮らしを考えました。FP3級で学んだことも、両親にアドバイスするときの支えに。勉強したことが、こうして身近な家族のために役立ちました。
FP3級の勉強に興味がある方は、わたしの簿記とFPの勉強体験も、よかったら読んでみてください。
もちろん、表を作れば将来もそのとおり、とはいきません。それでも、お金の見通しを目に見える形にできたのはよかったです。漠然と心配するだけでなく、家族で話す材料になりました。
これから表を作るなら、無料のひな形も参考に
とはいえ、いきなりライフプラン表を作るといわれても、何から書けばいいのか迷いますよね。わが家には父の表がありましたが、これから作るなら、無料のひな形を参考にする方法もあります。まずはExcelの白紙画面とのにらめっこを、ひとつ減らせます。
日本FP協会の「便利ツールで家計をチェック」では、家計の収支確認表やライフイベント表、キャッシュフロー表を公開しています。キャッシュフロー表のPDFには、家族の年齢や収入、一時的な収入・支出、年間収支、貯蓄残高を書き込む欄があります。
これは両親が使った表ではありませんが、これから家計の見通しを整理したい方にとって、表を作る際の参考になると思います。
元の家が売れるまでの生活費も考えた
もう一つ気になったのが、元の家が売れるまでのお金です。両親は売却代金を住み替えの資金に充てる予定でしたが、実際には新しい家を先に買いました。
中古住宅を購入してリフォームし、引っ越しを済ませてから、元の家を本格的に売り出しました。
両親自身が家を探していたとき、家具や荷物がある状態の写真を見たり、内見したりすると、あまり「買いたい」という気持ちにならなかったそうです。わたしたちも、住んでいる状態の家の中を公開したり、内見してもらったりするのは、あまり気が進みませんでした。
相談した不動産屋さんも、室内の撮影は家が空になってからのほうがよいとのこと。それもあって、引っ越し後に室内の写真を撮ってもらうことにしました。
新しい家の購入代金は、両親の手元のお金で用意できました。ただ、それでひと安心、とはいきません。家が売れるのを待つ間も、毎日の生活費はかかります。そのお金が足りるのかが心配でした。そこで、引っ越しまでにかかるお金や購入後に残るお金を確認し、生活費をどのくらい確保できるかを計算しました。
両親は信用金庫で行っていた投資も解約し、生活資金に充てました。また、一時的に兄からお金を借り、父が借用書を作成しました。結果として、そのお金は使わずに済み、元の家が売れた後に返しました。
ありがたいことに、元の家は本格的な売り出しから2〜3か月ほどで売れました。早めに売れたのは、資金面で本当に助かりました。
ただ、いつ売れるかは家や状況によって違います。わが家と同じように進めれば大丈夫、という話ではありません。年間のライフプランに加えて、購入や工事の支払いがいつあり、売却代金が入るまで手元のお金で暮らせるかを考えることも大切だと感じました。
親の住み替え前に、整理してよかった3つのこと
両親の住み替えを振り返って、わたしが特にやってよかったと思うのは、次の3つです。
- 資産を整理すること:どこにどんなお金があるのか、家族で確認できるようにする。
- ライフプランを見直すこと:家にかけるお金だけでなく、収入や生活費、その後の暮らしも考える。
- 住まいへの希望を言葉にすること:静かさや便利さなど、親が何を大事にしたいのか聞く。
新しい家の周りは、以前より静かになりました。一方で、生活には車が必要です。母には前の家への愛着もあります。静かさだけで、住み替えのよしあしを決められるわけではないと感じます。
その一方で、子どもたちとは会いやすくなり、わたしも孫を見せる機会が増えました。新しい土地の野菜や果物のおいしさを、両親が喜んでいる姿もあります。
親に気に入った家で暮らしてほしい。その暮らしを、無理なく続けてほしい。お金が気になるのも、そこまで含めての住み替えだからなんですよね。わが家では、両親の資産や生活費を整理し、父の表を一緒に見直したことが役に立ちました。これから親の住み替えを考える方に、少しでも参考になればうれしいです。


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